2005年08月04日
良好日米関係の落とし穴
米国から
日本と米国の間には現在、牛肉問題を除けば大きな懸案は見当たらず、両国の関係は過去最高レベルにあるといっていいだろう。日米関係を外交の基軸とする日本にとって、好ましい状況であることは言うまでもない。
ただ、長期的に見て注意しておかなければならないと思うことがある。それは、米国には「政策」を商品とする特殊な市場が存在することだ。
その中心的役割を担っているのがシンクタンク。時の政権にアイデアや意見、さらには人材を提供する役割を果たす。米国では政権が変わるとポリティカル・アポインティー(政治任命)によって、政府の中枢が数千人規模でごっそり入れ替わるが、シンクタンクはその主要な供給源でもある。
米政府が関心を寄せている分野であればあるほど、当然、シンクタンクなど外部への研究委託は多くなり、研究者が政府中枢に登用されるチャンスも増える。最近、何かと話題の中国は、議会公聴会のテーマになることが多く、中国専門家は引っ張りだこだ。
これに対して、日本はどうか。貿易摩擦で米国と火花を散らした時代に比べ、懸案事項が減った分、日本が議題になる機会も少なくなった。米国の「政策市場」から見ると、日本は中国や中東に比べて、“カネにならない”分野になりつつあるのが現状だ。
日本に関する政策の需要が減れば、供給側の研究機関は研究費を削減せざるを得ない。そうなると日本研究はさらに低迷し、専門家も育たなくなる。
米国内に知日派人脈を確保し続けるには、米政府やシンクタンクに常に日本への関心を持たせる努力が欠かせない。日米関係が良好なほど、その作業が難しくなるというのは何とも悩ましい限りである。
(H・ワシントン在住)
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日本と米国の間には現在、牛肉問題を除けば大きな懸案は見当たらず、両国の関係は過去最高レベルにあるといっていいだろう。日米関係を外交の基軸とする日本にとって、好ましい状況であることは言うまでもない。
ただ、長期的に見て注意しておかなければならないと思うことがある。それは、米国には「政策」を商品とする特殊な市場が存在することだ。
その中心的役割を担っているのがシンクタンク。時の政権にアイデアや意見、さらには人材を提供する役割を果たす。米国では政権が変わるとポリティカル・アポインティー(政治任命)によって、政府の中枢が数千人規模でごっそり入れ替わるが、シンクタンクはその主要な供給源でもある。
米政府が関心を寄せている分野であればあるほど、当然、シンクタンクなど外部への研究委託は多くなり、研究者が政府中枢に登用されるチャンスも増える。最近、何かと話題の中国は、議会公聴会のテーマになることが多く、中国専門家は引っ張りだこだ。
これに対して、日本はどうか。貿易摩擦で米国と火花を散らした時代に比べ、懸案事項が減った分、日本が議題になる機会も少なくなった。米国の「政策市場」から見ると、日本は中国や中東に比べて、“カネにならない”分野になりつつあるのが現状だ。
日本に関する政策の需要が減れば、供給側の研究機関は研究費を削減せざるを得ない。そうなると日本研究はさらに低迷し、専門家も育たなくなる。
米国内に知日派人脈を確保し続けるには、米政府やシンクタンクに常に日本への関心を持たせる努力が欠かせない。日米関係が良好なほど、その作業が難しくなるというのは何とも悩ましい限りである。
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