2005年11月26日

黄博士がぶつかった倫理の壁

韓国から

 原爆開発を導く一つの原理である相対性理論で有名なアインシュタインは、ルーズベルト米大統領に原爆開発を進言したことを後に「科学者ではなく、靴屋になるんだった」と言って後悔したという話がある。倫理という問題は、最先端を行く科学者の前に常に立ちはだかる大きな壁のようなものだが、ヒト・クローン胚(はい)からあらゆる細胞に成長するES細胞を世界に先駆け初めて作ったソウル大の黄禹錫博士も、その例外ではなかった。

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 黄博士の研究は、難病患者の皮膚細胞から以前より十倍高い確率でES細胞を作ることに成功、拒絶反応のない臓器や組織づくりなど臨床応用に画期的な進歩をもたらすものとして世界の脚光を浴びている。しかしクローン人間への転用を危険視する向きも強く、倫理面では賛否分かれていた。その黄教授の研究で、今度は研究用の卵子を研究チームの女性二人から提供され、対価まで支払われていたことが発覚。先日の記者会見で黄博士は「科学を進歩させたいとの焦りから倫理的な判断をする目が曇ってしまった」と謝罪し、世界ES細胞ハブの所長をはじめ、政府や関連機関の役職からもすべて退く考えを示した。

 黄博士に対し韓国世論の大半は「研究続行」を望んでおり、黄博士自身も研究を続ける意向だ。「韓国の自尊心」(マスコミ)とまで言わせた黄博士の研究をそうやすやすとストップさせるわけにもいかないだろう。ただ倫理観、特にクローン人間や卵子提供など生命の根源にかかわる、もっと言うなら人間の次元を超えた「神の領域」に対する挑戦的な内容があった場合、往々にして科学者は最大限に謙虚な姿勢を取るものだ。

 黄博士が「現在の心境としては研究職まで辞任し、自然人に戻りたい」などと語っているのは、単に世の中の雑音を敬遠したかったからなのか、それとも直感的に「神の領域」に対する畏敬(いけい)の念に駆られたからなのか、ご本人に尋ねてみたいものだ。

(U)

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sekai_no_1 at 09:43│Comments(1)TrackBack(1)韓国・北朝鮮 

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1. 韓国の生命倫理問題に関する急展開について  [ 幻影随想 ]   2005年12月08日 17:40
半月ほど前に取り上げた韓国の生命倫理問題が予想外の進展を見せている。 倫理問題だけで終わるかと思っていたら論文データに続々と疑問点が生じ始めているのだ。 この問題について手っ取り早く知りたいという人は、当ブログのこのエントリをご覧あれ。 幻影随想: 10分で分....

この記事へのコメント

1. Posted by 金王均   2005年12月04日 03:12
 ようやく「学問」の分野でノーベル賞を取れるかという研究だったのに、ケチがついた黄禹錫教授。ようやく取った「ノーベル平和賞」も「金で買った」と批判され、すっかり色あせているので、「学問」で正々堂々と取りたいというのは分かるけれど、研究者の倫理に限らず、倫理や道徳、礼儀といった韓国人が最も自負している分野で、それが結構、国際基準から見るとズレているところがあるのを韓国人は知らない。
 今回の騒動を見ていても、黄教授擁護の勢いが強く、世論は、自らの間違いを反省するよりは、指摘した者を妨害者のように敵視・攻撃するようでは、国際基準とはほど遠い。
 かつての日韓共催W杯でも、まるで韓国単独主催のようなはしゃぎっぷり。それって礼儀を欠いていると、国際社会では言うのだよ。

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