2006年06月23日
流れ出たメコンウイスキー
タイから
タイ証券取引所(SET)のキティラット理事長が、このほど辞任した。同国の酒類最大手タイ・ベバレッジ(タイビブ)がシンガポール取引所(SGX)に流出した責任を取ったのだ。
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キティラット氏は、日本でもある程度の知名度を持っているウイスキー「メコン」などを販売するタイビブのSET上場を計画していた。タイビブの昨年度売上高は約九百億バーツ(約二千七百億円)で純利益が百億バーツ(約三百億円)だった。
市場では上場時の時価総額を二千億バーツ(約六千億円)とはじき出し、SETでは過去最大の新規上場案件となるはずだった。キティラット氏とすれば、知名度は高く優良企業でもあるタイビブ上場でSETの信用度を増し、海外からの資本や個人投資家を引き寄せ、SETのパイを一回り大きくするのに一役買ってくれるものと期待しての上場勧誘だった。
だが上場計画に思わぬ横やりが入った。仏教界など保守派グループが「酒を販売する会社の上場は倫理的問題がある」として介入してきたのだ。とりわけ行動する仏教根本主義者として名高いジャムロン元副首相らが激しく抗議したことで、SET内部でも躊躇(ちゅうちょ)する人々が続出し始めた。
結局、SETはタイビブの上場問題を棚上げし、結論を出さないまま留保し続けた。時間は美酒を造り出す最大の担い手だが、事業拡大に意欲を持っているタイビブの経営者は時間の経過にいら立つばかりだった。結局、優柔不断のSETの間隙(かんげき)を縫うように、SGXがシンガポール株式市場への上場話を持ち掛け、まとめ上げてしまった。
「流れ出たメコンウイスキー」の詰め腹を切らされたキティラット理事長は、しばらくメコンウイスキーを口にするたびに悪酔いしそうだ。
(T)
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市場では上場時の時価総額を二千億バーツ(約六千億円)とはじき出し、SETでは過去最大の新規上場案件となるはずだった。キティラット氏とすれば、知名度は高く優良企業でもあるタイビブ上場でSETの信用度を増し、海外からの資本や個人投資家を引き寄せ、SETのパイを一回り大きくするのに一役買ってくれるものと期待しての上場勧誘だった。
だが上場計画に思わぬ横やりが入った。仏教界など保守派グループが「酒を販売する会社の上場は倫理的問題がある」として介入してきたのだ。とりわけ行動する仏教根本主義者として名高いジャムロン元副首相らが激しく抗議したことで、SET内部でも躊躇(ちゅうちょ)する人々が続出し始めた。
結局、SETはタイビブの上場問題を棚上げし、結論を出さないまま留保し続けた。時間は美酒を造り出す最大の担い手だが、事業拡大に意欲を持っているタイビブの経営者は時間の経過にいら立つばかりだった。結局、優柔不断のSETの間隙(かんげき)を縫うように、SGXがシンガポール株式市場への上場話を持ち掛け、まとめ上げてしまった。
「流れ出たメコンウイスキー」の詰め腹を切らされたキティラット理事長は、しばらくメコンウイスキーを口にするたびに悪酔いしそうだ。
(T)
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