2007年03月15日

オオカミとヒツジ

インドから

 サッカーではキーパーが捕りにくい、「地を這(は)うシュート」というのがある。取材にも「地を這う取材」が、意外とその国の一断面に迫れたりするものだ。今回のインドでは、汽車の旅がとてつもなく印象に残った。既に囚人護送列車にも似た普通席の様子や、スリの手から逃れるため、不眠の一夜を過ごしたことは書いた。

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 さらに話は続く。十五人から構成されるスリグループは、デリー手前で降りる直前、現金を要求してきた。席を空けたのだから、見返りをよこせというのだ。いくら欲しいのかと言うと、いくらでもいいと言う。要は駄目もとで、金を無心しているのだ。

 前の晩には、日本の歌を聞かせてくれというので童謡など五曲ほど歌った。「荒城の月」などテンポの遅いのは、インド人の心にフィットしなくて、「ギンギンギラギラ夕陽が沈む」などリズミカルなのが結構受けた。ともあれ、相手がスリグループにせよ、それなりに心は通ったかなと思ったが、こちらの思い過ごしだった。

 いや向こうにしてみれば、友情は友情、ビジネスはビジネスと割り切っているのかもしれない。結局、席を空けてもらったお礼として、非常食用の「ケンピ」を提供した。子供じゃないとすごむかと思ったが、結構、満足そうな顔をしていた。さらに今度は、席を譲ってやってほしいと頼んでくれたインド人が、ちょっと話があるからとスリグループから私を離した。

 やにわに「何か取られたものはないか」と聞いてきた。「無くなったものがあったら、取り返してやる」というのだ。取り返した暁には、その見返りはちゃんと頂戴(ちょうだい)するという意思が如実に表れていた。

 「ということはオオカミの群れにヒツジを放り込むように、彼らがスリグループと知っていて、私をその席に着かせたのか」と問いただしたかったが、思いとどまった。

(T)

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この記事へのコメント
Tさん、その旅だけで、かなりの経験をなさったのですね。インドのある側面がわかって、読む側には興味深かったのですが、げんなりしますよね・・・。外国にいたら(特に現在経済発展が激しい国?)、ありがちなことなんでしょうが。知人が某国で「「友情は友情、ビジネスはビジネス」の世界で、相手の豹変振りに度肝を抜かれることしばしば」と語っていました。
「スリグループと知っていて、私をその席に着かせたのか」と問いただしても、よかったのではないかと思いました。(実験として) 相手の返答しだいで、本音と建前の世界なのか、ハードボイルドの世界なのか、次回の傾向と対策に・・・。お疲れ様でした。次回のレポートも期待しております!
Posted by karu at 2007年03月15日 15:18