2007年03月22日

悲観的なイラク報道

米国から

 イラク戦争が始まって丸四年が過ぎた。イラクの情報は、米政府の発表以外には、米メディアの報道に大きく依存せざるを得ないのが現実だが、この四年間で一つ学んだことがある。「米主要メディアは常に悲観的」ということだ。

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 開戦直後に米地上部隊のイラク進攻が始まって以降、大半がリベラル系の主要メディアでは、「米軍の苦戦」「戦闘の泥沼化」を予測するリポートが相次いだ。だが、首都バグダッドは開戦して約三週間で陥落し、旧フセイン政権はあっけなく崩壊してしまった。二〇〇五年に行われた国民議会選挙についても、投票日の治安情勢や投票率などについて悲観的な見方が多かったと記憶する。しかしフタを開けてみると、テロリストの脅しをモノともしないイラク国民が大挙して投票所に押し寄せた。

 一方、〇六年以降、バグダッド付近では宗派間抗争が激化し、治安情勢は、ブッシュ大統領自らが「容認できない」と認めるレベルまで悪化した。当然のことながら、主要メディアのイラク報道は暗いニュース一色となり、結果として、米国民の大半がイラク情勢の先行きを悲観する状況となっている。

 これとは対照的に、イラク国民は現状をもっと前向きにとらえているようだ。英世論調査機関が二月にイラク全土で行った調査では、現マリキ政権下の方がフセイン政権下の生活よりも「良い」と回答した人が49%に達した(「悪い」は26%)。米主要メディアの一部はイラクの現状を「内戦」とみているが、同調査によると、それに同意する割合は27%にとどまり、四割が「内戦」との見方に否定的だった。

 こうした「楽観的」情報は、主要メディアでは取り上げられないか、紹介されたとしても扱いは小さくなる。根拠のない楽観論は危険だが、行き過ぎた悲観論も道を誤らせるので要注意だ。

(Y)

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この記事へのコメント

1. Posted by 蚊め!   2007年03月22日 11:18
アメリカの忠実な犬である日本であるからこそ(言いたくないけれど)、イラク情勢は的確な報道をして欲しいですね。

 そういう意味でもプロの記者さんが書かれるこのブログは、世の中のさまざまな事象、ニュースに対する水先案内人になることがあります。
2. Posted by karu   2007年03月22日 14:31
戦いでは士気が大切です。悲観論は困る。ですが、「「戦闘の泥沼化」を予測するリポートが相次いだ。だが、首都バグダッドは開戦して約三週間で陥落」…う〜ん。どこに視点を据えるかでしょうか?3週間で陥落したのは事実でも、その後国連関係者の死傷者が多数でて、諦めて出て行かざる終えない状況になったし、今や、内戦状態。私には十分、泥沼化に見えます。
世論調査も、母集団をどうとるか、サンプリング、調査方法、質問者、質問の表現など、いろんな要因で変わるのでは、と思います。BBCのした調査はかなり悲観的でしたが。(BBCは一般に少々偏ってると思うけれど)
楽観して備えが不十分より、悲観的であって不測の事態に備えるほうがいいのでは。アラブは一筋縄ではいかない、というのが私の印象です。
3. Posted by karu   2007年03月22日 14:43
それと、アメリカの悲観論も、結局は、アメリカにとっての悲観的な状況であって、イラク国民にとっての悲観的な状況なのか?という疑いがあります。死亡兵士や経費の増加プラス先行きの不透明さ等が主ではないか、第二のベトナム戦争のように泥沼化する状況を憂えているのではと。
イラクを脱出し中東を彷徨うイラク人の増加や、急激な増加で受け入れ先(ヨルダン等)が受け入れ不可能な状態になっていること、4年たっても電気など基本的なものが不足していること、など、イラクの人にとっての悲観的な状況を考えてのものなのか? 他のアラブでさえ、「あいつら殺し合いやりたがってるんだから、やらしておけば?」のような冷淡さも聞きます。

ですが、もちろん、記者氏が書かれたように、違う視点で見ることも大切だと思います。

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