2007年07月19日

素焼きの甕

ミャンマーから

 観光客を引き付けるのは、美しい自然だけではない。住民が文化として持ち合わせているホスピタリティーのありようが、もっと大きな磁場を持つこともある。邪念のない澄んだ心はエメラルドの海をしのぎ、与えることを喜びとする心根の豊かさは、自然の豊穣(ほうじょう)に勝る力を持つ。

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 軍事政権とはいえミャンマーの町を歩くと、昔の日本の田舎を歩いているような安らぎを覚える。人々の衣服は、ロンジーという腰巻き風のものを男女を問わず身に着け、ジーパンやズボンは少数派に属する。ただし上半身はシャツを着ており、上下で民族服と西洋の服とを折衷させた格好になっている。これが結構、様になっており着物に革靴を履いたような和洋折衷のようなおかしさはない。

 町の通りにはインドシナ地域特有の赤色をしたラテライトの素焼きの甕(かめ)が、木製の郵便入れのような箱の中に置いてある。

 中には水が入っており、誰でも自由に飲める。素焼きの甕は、熱帯のミャンマーにあっても十分な気化熱を奪い、中に入っている水は深い井戸水のようにひんやりしておいしい。ミャンマーでは旅人をもてなす住民の優しい心根が、今も生き続けている。

 世界の最貧国に属するミャンマーは、バンコクのような地下鉄や高架鉄道もない。国際空港にしたって飛行機のタラップを降りて移動しなければいけない不自由さはあるが、貧しいインフラを補って余りある人々のホスピタリティーが存在する。

 経済的貧しさは必ずしも人々の心まで貧しくするわけではない。軍事政権だからといって、人々は心まで武装しているわけでもない。日本では衣食足りて礼節を知らない人々が増えている。ミャンマーでは外的環境こそ苛酷(かこく)だが、内的世界は別世界だ。

(T)

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sekai_no_1 at 08:40│Comments(0)TrackBack(0)アジア 

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