2009年07月30日

作家・村上早人氏のこと

米国から

 8月15日の終戦記念日が近づくと必ずと言ってよいほど注目される作家がいる。東京大空襲で母親を目の前で亡くし戦災孤児となった。日本各地を転々とし、15歳で米国密入国を図り、何度も移民官に捕まっては強制送還されながらも米国密入国を続け、最後には永住権を獲得した村上早人氏だ。

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 絶版となっていた自叙伝を新たに加筆、「戸籍も本名もない男−アメリカで夢を掴んだ戦災孤児」(講談社)と題した本が今年出版され、話題を呼んでいる。

 村上氏がロスの近所に住んでいる関係で、何度か交流があり、本も何冊か読ませてもらっている。村上氏が持つ強烈な原体験は、B29 から焼夷弾が無差別にばらまかれて多くの民間人が犠牲になった1945年3月10日の東京大空襲で、母親が死んだ鮮明な記憶だろう。

 左肩が吹き飛ばされ、腹から腰にかけて丸太に貫かれながら、残った手で懸命に「早く逃げなさい」とわが子に合図を送る母親の姿。自分を拾って育ててくれた売春婦。広島の被爆者の女性との出会いと愛を綴った書簡の交換。村上氏の本の底辺には神聖視された女性の愛情、母親の愛情がある。

 今回、改訂して出版された本の帯には「困難に克つどん底力」というキャッチコピーが付いている。戦後最悪の不況に日本も襲われており、どん底から這い上がった戦災孤児の生きざまとその後の人生展開は、今の多くの日本人、ビジネスマンに勇気と力を与えるものだ。

(M)

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