2013年07月31日

最後の「タルドンネ」

韓国から

 先日、日本から来客があり、ソウル市内の低所得者が密集する地域に案内する機会があった。市の北東端、山腹の一角に古い平屋の家がぎっしり並んでいる。1960年代に市中心街の開発で追われた人たちが移り住んだところだ。

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 韓国ではこうしたいわゆる貧民街を「タルドンネ」と呼んできた。タルは月、ドンネは町内の意味で、すなわち山腹などわずかながら平地より高く、月により近い所に低所得者たちが住み着いたのが由来だ。一昔前まで「タルドンネ」は随所にあったが、再開発の波が押し寄せ、今ではここが最後だという。

 町内の入り口から細い路地に入り、急な上り坂を進むと、今にも崩れそうな外壁の内側にトタンや瓦の屋根の家々が続いていた。都市ガスは通っていないようで、プロパンのボンベがあちこちにあった。人影はまばらで時折すれ違う住民はみな高齢者ばかり。ゴミが山積みにされた空家が何件もあった。

 高層ビルが林立し、目覚ましい発展を遂げる韓国の首都にも、まだこんな場所があったのかと、さぞかし驚くだろうと思ったが、客人は意外にも「韓国はまだいい方ですよ」と言った。いきなり拳銃を突き付けられたり、麻薬が取引されているような危険地帯が多い世界の「タルドンネ」と比べたら「平穏で治安も悪くなさそう」だからだという。

 間もなくここも再開発されるが、景観はできるだけ今のまま残し、家の中だけをリモデリングするのだそうだ。貧しかった時代を懐かしむ余裕が、この国にも出てきたということかもしれない。

(U)

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sekai_no_1 at 10:13│Comments(0)TrackBack(0)韓国・北朝鮮 

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